2022年5月から取り組んできた house k. 〜 塔の下に暮らす家 は、昨年秋の着工後、予定通り工事が進められていましたが、本年2月末に突然の施工会社倒産という不測の事態に見舞われました。現場は、基礎の配筋・型枠工程を終え躯体を打つ寸前で中断を余儀なくされ、それ以来、クライアントをはじめ、新たな施工者、設計者、関係業者一同が頭を悩ませ、各々ができることをやり、次の方向性を模索してきました。しかし残念ながら、クライアント家族は、どうしてもよい将来像を描くことができず、この度6月末をもってプロジェクトの中止を決断されました。
設計チームは、家族の結び付きを強めながら少しでも費用負担を軽減すべく建物のコンセプトでもある塔とスタジオを一旦取りやめ規模縮小して建設し、近い将来息子さんがそれを増築する代替案も提示しましたが、今回の損失を補うまでには至りませんでした。
ある庶民の家族が長年真面目に働いて貯めたお金で親戚/親から引継いだ土地に家族の絆を強める為に何度も躊躇しながら決心した自邸の建設であり、その夢があと一歩で叶う手前での今回の出来事でした。
2年間一生懸命知恵を絞り幾多の困難を乗り越えてきましたが、新たな暮らしを提供できなかったのは、広い意味で私の力不足といえます。一方で最後まで誠心誠意尽力くださった関係者の皆様にはこの場を借りて感謝の意をお伝えしたいと思います。
クライアントは今深い深い悲しみの中にいると思います。1日も早く立ち直っていただき、我々が構想した将来像より遥かに幸福な未来を手にしてくださることを心より願っております。